明けましておめでとうございます。12 月 24 日の終業式から2週間があっという間に過ぎたように感じています。大きな事故や問題行動の報告は受けておらず、新型コロナ感染報告もなく 3 学期の始業式を迎えられたことには安堵していますが、一方では東京・神奈川・千葉・埼玉の 1 都 3 県に昨年 4 月 7 日以来となる 2 回目の「緊急事態宣言」が発令されました。1 月 6 日の東京都感染者数は初めて 2000 人を超え、2447 人と発表されました。一人一人が感染防止に努め、自分を守り仲間を守り、家庭や学校、社会を守る意識で行動を自粛すべき状況にあることは、まぎれもない事実であります。

 

こうした事態を受け、本校としても国や東京都教育庁が示している「感染症対策と学校運営のガイドライン」等を参考にしながら、緊急の危機管理会議を開き今後の対応を決定しました。さらに、感染状況の分析では家庭内感染の発生が最も危惧されることから、保護者宛に「家庭における感染防止対策」に関する文書を発信し協力をお願いしました。学校運営上の安全対策として、当面の間は登校時間を遅らせ、部活動も中止とし、密を避けて早い時間帯に下校できるよう配慮していますが、家庭生活においても十分な感染防止対策を実践するよう、一人一人が努力してください。

 

文部科学大臣が学校運営の継続や、大学入試共通テストの実施を公表し、緊急事態宣言が出されても教育活動は止めない方針を、国として明確に示しました。大学受験を控える3年生は、体調管理に気を付け、万全の状態で試験を受られるよう留意し、受験の準備を進めてほしいと思います。感染拡大を受け、やむを得ず様々な行事を中止することになりましたが、今後の動向を見ながら、代替行事の実施も含めて検討していきたいと思っています。6日の菅総理大臣の会見では「私たちは長い間新型コロナで苦しむ間に、多くのことを学んで来た。」とのコメントがありました。私もこれまで機会をとらえて同様の話をし、校長ブログにも「逆境は人を育て賢く強くする」という内容で書いて来ました。どのように行動すればリスクを回避できるかは、皆さんは既に学んでいる筈です。一番心配なことは、無症状の人が自分では感染に気付かず、マスクを外し大声で話し、多人数で 会食をするなどの中で感染が拡大することです。また、家族内に高齢者や基礎疾患を有する方がいる場合は、一層の注意が必要です。どこで感染するか分らないところがコロナの怖さであります。その意味では、感染した人を誹謗中傷し、差別するなどの行為は決してあってはならないことであります。今後もいろいろな制約のある生活が続くと思いますが、その中で何ができるかを見極め、確かな努力を継続してほしいと思います。成功する人は、困難をやりがいに変えて力をつけて行く人だと私は思っています。今日は、私が大切にしている言葉を紹介して話を閉じたいと思います。

 

私たちが毎日便利に使用しているスマホのバックライトやパソコン、テレビ、車のライト、体育館やグラウンドの照明などにLEDが使われることが一般的になりました。7年前の 2014 年、赤崎教授・中村教授・天野教授の日本人科学者 3 人が「青色 LED の開発」の実績を認められ、ノーベル物理学賞を受賞しました。天野浩教授は静岡県浜松市の出身で、当時私が勤務していた地元浜松では大変な盛り上がりとなりました。天野教授は 1500 回の実験に失敗したのちに、半導体から青色光を取り出す新しい技術を開発し、赤・緑・青のダイオードを混合して「完全な白色」を完成させたという実績が高く評価されました。天野教授は会見で「重なる失敗では熊沢蕃山の言葉に支えられた。」と答えています。熊沢蕃山は江戸初期の陽明学者で不遇な人生を送りましたが、「憂きことのなおこの上に積もれかし、限りある身の力ためさん」という言葉を残しています。

 

その意味は、「つらいことや苦しいことがこれ以上のしかかってくるなら来てみよ、限りある力、限りある命ではあるが、どこまで出来るか試してやろう」というものです。蕃山の教えや信念は、時を経て松下村塾で幕末の獅子を育てた吉田松陰や、幕府方の勝海舟なども高く評価していたと文献に書かれています。地元の高校で学んだ天野教授は、校長先生が全校集会の訓辞で話されたこの言葉を自らの「座右の銘」として大切にし、研究に取り組んできたと紹介されていました。「限りある身の力ためさん」とは、激しい闘志を感じさせる強い語調になっています。コロナのつらく苦しい日々を、ポジティブに過ごすかネガティブで過ごすかで大きな違いが出ることは間違いありません。人生もまた同じでありましょう。1500 回の失敗を乗り越える忍耐と執念には、世界の 人々のために必ず成功させると強い気概を感じます。そして「限りある身の力ためさん」という熊沢蕃山の言葉が、天野教授の心の底に厳然と存在したことは疑う余地がありません 。是非、熊沢蕃山や天野浩教授について調べて、将来の参考にしてほしいと思います。

 

大変な時期ですが 3 学期を充実させて、この 1 年を良い年にしていきましょう。皆さんの頑張りに期待しています。

 

校長 松田 清孝