間もなく本校の文化祭である「荏原祭」の開催時期を迎えます。

しかし、新型コロナ感染症の拡大は収束の気配を見せず、予防対策として「3密」を避け「新しい生活様式」を徹底する条件下では、例年の方法での開催は極めて困難な状況にあります。

生徒会を中心に検討が進められ、本年度はロングランの「オンライン文化祭(仮称)」が企画されております。学校行事の人気ランキングで常に上位を占めるのが、体育祭や文化祭、修学旅行であり、荏原生にとっても高校生活最大の楽しみの行事である筈です。

多くの行事を中止や延期せざるを得ない中で、都内私学第1号の「学校情報化優良校」である本校の生徒が、ICT技術を駆使する文化祭の初の試みに挑戦しています。

「ピンチをチャンスに変える」発想と企画は高く評価されるべきであり、校長としても大いに期待するところであります。

 

私には記憶に残る文化祭があります。

前任校の文化祭の開会式で、ステージから気のはやる全校生徒に向かい、文化の香る話として「弄花香満衣」の話をしました。

翌日の一般公開で校舎を回ると、書道部の展示室に「弄」「花」「香」「満」「衣」と一字ずつ書かれた色紙が展示されていました。

私は咄嗟に「部員が展示する名句を校長がパクッたように先に話してしまった。」と思い、3年生の女子部長を呼び謝りました。

ところが事実は真逆でありました。

部長は「3年生は女子5人であり、最後の文化祭で5文字の名句を一字ずつ書いて展示する企画でしたが、良い句が見つからず困っていました。校長先生の昨日のお話を聞いて5人は感動し、すぐに書き上げました。本当にありがとうございました。」というのです。

私は逆に生徒の素直な反応に感動しました。

 

中国は唐の時代、于良史の「春山夜月」(しゅんざんやげつ)と題する詩の一節でありますが「花を弄すれば香り衣に満つ」と読み、私の実家の床の間に掛け軸があります。

直訳すると「花を摘んで楽しんでいると衣に香りがしみついていつまでも香しい」となりますが、深い意味では「良い環境にいると良い影響を受ける。

努めて良い友、良い師につくよう、良い環境に身を置け」とされ、さらに「高い教養や仁徳を持つ人は、周囲にその影響を与え、花の香りが染み込む様である」と解説する学者も見られます。

「孟母三遷の教え」に共通する面もありますが、花にたとえるところに風情があり、耳ざわりの良い、文化の香り高い詩の一節として、私の大切な教訓としております。

詩の中では「掬水月在手・弄花香満衣」の対句になっており、「水を掬すれば月手に在り、花を弄すれば香り衣に満つ」(水をすくうと月が映り手の中にあるようだ。

花を摘んで楽しむと香りが衣にしみついていつまでも良い香りがする)というものです。

 

荏原高校はより高い文武両道を目指し、スポーツでは国際舞台で活躍する生徒や、15の競技で全国大会に出場するとともに、学業面では一人1台のiPadによるスピード感のある情報量の多い授業が双方向で行われ、校内に外部の進学塾を導入し、いつでも・いくらでも学びたい時に学ぶことができる環境と指導体制が整っています。

本校の教育方針のキーワードである「求めて学び・耐えて鍛え・学びて之を活かす」
という日々の教育が、着実に実を結びつつあることを実感しております。

未だコロナ収束は見えておりませんが、生徒とともに今なすべきことをしっかり見定めて、着実に前進してまいりたいと思う日々であります。

 

校長 松田 清孝