新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う我が国初の緊急事態宣言、さらに国や都の自粛要請を受け、長く臨時休業を継続してまいりました。予定した学校行事が延期や中止となり、新入生にとって大切な儀式である入学式も二カ月近く遅れての実施となりましたが、改めて皆さんの高校入学を心からお祝いしたいと思います。
こうして393名の入学生をお迎えし、この校舎で一緒に生活を始められることが、 例年の何倍も嬉しく感じられるのは、今日を待ち詫び、耐え続けた苦しい日々があるからであります。一日も早く高校生活に慣れ、仲間を作り荏原の一員としての自覚を持つことが出来るよう期待しています。学校に来ることも出来ず、先生方に会うこともなく、自宅に届いたiPadの操作に慣れていない状況で、学級担任との面談やオンライン授業をスタートするという事態に至りました。皆さんの中には慣れるまでに時間を要したり、操作がよく分からず悩んだりした人もいたでしょう。大変だったと思いますが、よく頑張りました。臨時休業中に私から皆さんに送ったメッセージ「逆境は人を育て賢く強くする」という言葉を心に刻んでおいてください。いつの日かその言葉が皆さんの支えになる時が来るかもしれません。しかし、全国でオンライン授業が実施できる環境を持つ学校は数少なく、都内でも多くの学校が課題を郵送したり、録画された授業を一方的に見る形式で、長い期間、自宅で学ぶ光景がニュースで流れるたびに、「学校情報化優良校」の認定校である荏原高校が、極めて恵まれた環境を有していることを強く実感することになりました。いよいよ学校が始まりましたが、皆さんが本校に入学するまでには、ご家族をはじめ、中学校の先生方やクラスメート、部活動の仲間など、多くの人に支えられ、励まされてこれまで頑張ることが出来たのではないかと思います。
お世話になった方々への感謝の気持ちを、いつまでも大切にしてほしいと思います。この「入学記念式典」は動画で保護者の皆様にもご覧いただけるよう配信いたします。保護者の皆様には心から入学のお祝いを申し上げますとともに、臨時休業中のご対応に深く、深く感謝を申し上げます。 これからの三年間、お子様が充実した高校生活を送り、逞しく成長され、目標を手に掴むことができますよう、学校との連携を強く保ちながら、物心両面にわたるご支援とご協力を賜りますよう、切にお願い申し上げます。
本校は、明治37年に設置認可を受け、翌年4月20日の開校であり、創立116年を誇る伝統校である一方で、先進的ICT教育の推進校として、昨年 9 月に「学校情報化優良校」認定を受けた、不易流行を実践する「さきがけ」の学校であると自負しております。また、本校創設者であり初代校長であられました「加納久宜子爵」は、私財を投じて日本の教育改革、地方自治、農業振興、産業組合の育成などに多大な貢献をされ た方であります。皆さんには日を改めて紹介したいと思います。さらに本校は、初代校長が示された「知育・徳育・体育」の調和と「慈育厳教(じいくげんきょう)」の教育目標を掲げ「慈しみ育て厳しく教える」という粘り強い指導、 面倒見の良い学校として、評価を得ています。卒業生は3万人を超え、各界で活躍する、名だたる著名人を輩出し、3号館の「100周年記念資料展示室」には、輝かしい実績を物語る賞状やトロフィーなどが数多く陳列され、歴史の重さを感じさせてくれます。
本校の部活動や地域のクラブで活動する生徒の実績は前年度、世界大会に5人出場し、この中には世界チャンピオン・アジアチャンピオンが含まれています。 また、インターハイを含む全国大会には15競技が出場、ライフセービング部の2年連続全国優勝、柔道の国体少年男子団体優勝など本校歴代最高の結果を残すことが出来、校長として誇りに思っています。 進路面では現浪で明治大学や中央大学など難関大学合格、また日本体育大学に過去最多の117名が進学し、日体大との絆を深めています。
民間の塾によるESC(荏原スタディセンター)を校内に設置し、学び方や個別指導を可能にする効果的な学習環境が整っています。部活動と勉強を両立させ、あらゆる進路目標に対応可能な「文武両道」の学校であります。また本校での生活では、中学校とは違うスケールの行事やイベント、実習、海外留学など、魅力的なメニューが数多く用意されております。本校には中華人民共和国、大韓民国、モンゴル国など海外からの留学生が在籍し、国際交流が盛んなグローバルな雰囲気が定着しています。
東京オリンピックの開催が延期されたことは残念ではありますが、代表未決定の競技においては、まだ本校同窓生や現役生にもチャンスが残されているという、ポジティブ シンキングを持ちたいと思います。新型コロナ感染症が収束しオリンピックの開催が可能になるよう、みんなで祈りましょう。大切なことは、夢の実現に向かって妥協することなく、常に努力を続けることこそが成功への唯一確実な方法であるということを忘れないことであります。本校は「求めて学び・耐えて鍛え・学びて之を活かす」という教育信条を掲げ、より高い文武両道の実践を通して、世のため人のために貢献しようとする人材の育成を目指しています。新入生の皆さんには、是非高い志を持って、夢の実現に向けて荏原高校で大いに力を付けてほしいと思います。
本日は諸般の事情により、保護者並びにご来賓、松浪理事長のご出席も見合わせていますが、松浪理事長の訓示は過日皆さんに動画で聞いてもらいました。緊急事態宣言解除とはいえ、油断は禁物です。第二波の感染防止に向けて、新しい生活様式を身に付け、自分を守り、仲間を守り、家族を守ることが学校や社会を守ることになるという意識で行動してください。そして、夢の実現に向け挑戦を続け、皆さんの 輝く未来を切り開いて行きましょう。
動画をご覧の皆様には、今後も本校の教育活動にご理解とご支援を賜りますよう、切にお願い申し上げますとともに、全ての皆様のご健勝とご多幸を心よりご祈念申し上げ式辞といたします。