令和2年1月13日、我が国では122万人の若者が「成人の日」を迎え、全国各地で成人を祝う式典が行われました。2005年(H17)の成人数は150万人でありましたが、令和元年の出生数は90万人を割り込み、少子化の深刻さがその数に表れています。荏原高校では1月19日、兄弟校の浜松日体高校では12日に同窓会主催の「成人を祝う会」が催され、多くの新成人が集まり楽しい時間を過ごしました。校長及び特命校長として両校の会に出席し、祝辞を述べるとともに「コミュニケーション能力と信頼される人間」について新成人に向けて話しました。訓示の内容は「コミュニケーション能力の高さは信頼を得ることにつながる。信頼は期待を呼び、期待はチャンスを呼ぶ。チャンスは成功を呼び、成功は更に広い世界を呼ぶ。故に信頼を得る人は広く活躍する世界を有することになる。」というものでしたが、両校の新成人は真剣に耳を傾けてくれました。変化の激しい社会に生きる覚悟を感じるとともに、コミュニケーション能力を高め大いに活躍するよう期待したところです。
優れたコミュニケーション能力を有する人材は、相手に好印象と安心感を与え様々なステージで良好な人間関係を構築し、課題を共有しながら信頼を得て、目標の達成や問題解決に大きな力を発揮する、魅力的な存在になることは言うまでもありません。昨年度の日本経団連調査によりますと「企業が採用時に重視する要素」の第1位は、16年連続で「コミュニケーション能力」、第2位は「主体性」、第3位は「チャレンジ精神」、第4位は「協働性」、第5位は「誠実性」という結果が発表されています。これに対して「マイナビ学生の窓口」調査では、コミュニケーションが苦手と答えた男子学生が54.3%、女子学生が60.1%であったと報告されています。コミュニケーション能力の優れた人の特長には様々な見解がありますが、共通点を整理しますと①正確な知識や情報を持ち思考力・判断力の高い人、②相手への共感的姿勢と協働性の高い人、③周囲の意見を傾聴し相手に分かりやすく伝える表現力の高い人、④例え話やジョークで機転を利かせる心の余裕がある人、という人物像が浮かびます。ネット上には専門機関等からコミュニケーション能力を高める訓練として、ミラーリングやペーシングなど様々なトレーニング方法が紹介され、参考になると思われます。
これまで学校現場や教育行政を通して多くの難題に直面しましたが、何とか乗り切ることができました。振り返れば多くの人に助けられ、難解な事案が思わぬ展開で解決するなど、人に恵まれ、良好な人間関係に救われた思いが強く感謝の念は尽きません。一方で、トラブルを頻繁に抱える組織や担当者を目にしたことも少なくありません そうした事案を分析すると、未然防止に向けた洞察や配慮、さらにコミュニケーション力が機能していれば、解決できた可能性を否定できないものも数多くありました。これから社会に巣立つ将来ある若い人達には、多くの経験を通してより良い人間関係を構築する「高いコミュニケーション能力」を身に付け、国際化の急速な発展や高度に発達したAI等の機器を有効に活用しながら、最終的には人の知恵と人間力を持って諸問題を解決に導く活躍で、生きがいを感ずる納得のいく人生を手にしてほしいと願って止みません。
時代が求める人材の輩出を目指し、本校は、生徒の主体性を重視しつつ、協働的に課題を解決する姿勢を育て、思考力・判断力・表現力を身に付けるとともに、高いコミュニケーション能力を育成する教育を実践してまいりたいと思っています。そのためにも常に「建学の精神」や「求めて学び・耐えて鍛え・学びて之を活かす」の教育理念を心に留め、生徒・教職員が一丸となって前進してまいる所存です。
校長 松田 清孝