あっという間に「令和」も2年目に入り、オリンピック・パラリンピックイヤーを迎えました。1964年(昭和39年)の東京オリンピックは、当時小学6年生であった私の大切な想い出になっています。胸弾む軽快なリズムの古関祐而作曲「東京オリンピックマーチ」は、子ども心にも感動を覚え、自然に体が動き始めるほど大好きな曲でありました。50年以上を経た今でも聞き入ってしまう、私にとっては宝の名曲であります。国民体育大会の開会式で何度か行進した私は、大好きなこのマーチでの行進を夢見たものですが叶わず、改めて音楽の持つ魅力と偉大さを謙虚に認めるものであります。思い起こせば、聖火最終ランナーの坂井義則さんが階段を駆け上がる雄姿に始まり、アメリカ36個、ソビエト連邦30個に次ぐ金メダル16個の獲得は、参加国中3位にあたる快挙で世界が大いに驚愕し、「強国日本」を強くアピールした大会でありました。昨年のラグビーワールドカップ日本開催と同様に、国民に大きな感動と勇気を与え、日本人であることに誇りを持つ、絶好の機会となる大会にしなくてはなりません。

 

私が今大会で興味を抱くのは、高い競技レベルやメダル獲得数は勿論ですが、自分が国体の競技式典担当でもあった経験から、世界の最先端を行く我が国のコンピュータ技術や音響・映像を駆使した、想像を超えるであろう開会式の企画や演出であります。国際社会に向け「世界平和と日本の存在感」を効果的に情報発信するため、開催国の特権を如何なく活用し、科学技術の高さやおもてなしの心をアピールしたいものです。1984年ロス五輪ではロケットマンが背負い式のジェット噴射でスタジアム上空を自在に飛び、世界の度肝を抜きました。1992年スペインバルセロナ五輪では、聖火台に向けてアーチェリーのアントニオ選手が火矢を放ち見事に点火させ感動を呼びました。2008年北京五輪の2008人による太鼓演奏のパフォーマンスは、中国らしい壮大なスケールに圧倒されました。いずれにしても時間・経費・人・企画が必要になります。 国体の式典開催経費は、当時の私の他県調査では10~14億円でありました。ところがオリンピックともなるとその額は膨大で、2012年ロンドンオリンピックで は実に33億円と報告されています。東京オリンピックの開会式では「さすがは日本」と世界を唸らせる内容を期待する半面、開催経費が東京開催決定時に比べて大幅に増額するとの報道や、オリンピック終了後の会場の後利用や、財政負担の後遺症などを指摘する報道を耳にするたびに、自分が国体担当であった頃にも同じようなことが報道されたことを思い出し、スポーツイベント誘致の難しさを改めて実感した次第です。しかし、世界最高レベルの競技を目の当たりにできる貴重な機会でもあり、生徒達には異次元のスピード、技、パワー、精神力等を肌で感じる体験をさせたいと思います。幸い、本校は都内に位置する高校としていくつかの競技を観戦させていただき、日本をはじめとする参加国を応援する機会に恵まれる計画があり、嬉しく思っています。

 

本校同窓生には今大会に出場の可能性が高い選手がいることや、現役生で世界大会やアジア大会で優勝し、次回パリ五輪を視野に入れて競技力向上に励む生徒がいることから、オリンピックが極めて身近に感じられる雰囲気が校内に醸成され期待が膨らみます。開催まで200日を切り、日に日に開催気運の高まりが顕著になるでありましょう。胸の高まりを抑えながら、7月24日の開会式を心待ちにしたいと思います。そして、我が人生2回目の自国開催の「スポーツの祭典」を、心行くまで楽しみたいと思います。

 

校長 松田 清孝