日体大荏原高校は、学校創立 117 年目という長い歴史と伝統の中で、数多くの有為な人材を世に送り出すとともに、我が国のスポーツ界を代表する著名人も多数輩出してきた実績を有しています。一例を挙げれば、プロ野球選手はもとより元セリーグ審判部長であられた小林毅二氏、プロゴルファーの井沢利光氏、丸山茂樹氏、「体操のお兄さん」で有名な佐藤弘道氏など、中年世代の方であれば知らない人はいないであろうと思われる名前が並びます。オリンピック出場者には、冬季五輪女子アイスホッケーの中村亜実、岩原知美両選手、シドニー五輪トランポリンの中田大輔選手、ロサンゼルス五輪ハンドボールの松井幸嗣選手などを挙げることが出来ます。

 

最近では柔道男子 81 ㎏級で世界選手権銀メダリストの藤原崇太郎選手が東京オリン ピック候補選手になりましたが、惜しくも代表の座を射止めることは出来ませんでした。そしてこの 4 月、多くの競技で代表選考の大会が開催される中、女子体操競技の畠田瞳選手が見事に日本代表に内定するという、嬉しいニュースが届きました。畠田選手は高校在学中に、2018 年インターハイ個人総合優勝、2019 年イタリアでのユニバーシアード個人・団体で4つの金メダル獲得、そして 2021 年全日本選手権とNHK杯でともに総合 2 位という堂々たる成績で代表の座を手中に収めました。他の競技でも本校同窓生が日本代表入りが確実になったという、競技団体関係者からの情報が届いておりますが、執筆段階では公表できるまでに至っておりません。


3 度目の緊急事態宣言が再延長され、感染者数は減少の傾向を見せてはおりますが、ワクチン接種の遅れなどもあり東京オリンピックが無事に開催されるかどうか不安は尽きません。しかし、日本代表に内定した選手には、いつでも最高のパフォーマンスを発揮できるよう、万全の準備を進めていただきたいと思います。

 

本校では国際大会や全国大会に毎年10を超す競技が出場し、優勝をはじめ上位入賞する生徒が数多く出ています。さらに、大学等に進学して大活躍する選手も多数見られ、本校関係者から日本代表選手がいつ出ても不思議ではない状況が見られます。在校生は同窓生の活躍により自信と勇気を享受し、自分たちも全国大会出場に満足することなく常に頂点を目指すのだという気概が育って来ているように感じられます。伝統とはそうした「先輩・後輩のリレーション」が積み重ねられ、見えないタスキが引き継がれる、精神の遺産のようなものであると私は考えています。本校生には、自分のため、応援してくれる家族や仲間のため、そして自分の後を追いかける後輩たちにも思いを馳せ、苦しい練習やプレッシャーと戦い、多くの声援を力に変えながら、選手としてだけでなく人間としても大きく成長してほしいと思います。

 

本校は「文武両道」を掲げ教育活動に取り組んでおりますが、部活動実績向上や難関大学合格数の増加は、日々の充実した教育レベルを証明する結果であると考えます。生徒には互いに切磋琢磨し合い、様々な活動を通して人間力を高め、本校の教育理念である「求めて学び 耐えて鍛え 学びて之を活かす」姿勢を貫いてほしいと思います。終息の見えないコロナ禍の中で、制約のある短い練習時間を有効に活用し、感染防止に万全の対策を講じながら、生徒たちの挑戦の日々が続いています。今年はどんな活躍を見せてくれるのか、生徒を見るたびに頼もしく感ずる毎日です。